第八章 干将鋳剣興呉都 要離断臂詐慶忌
呉王闔閭の命令を受けて、伍子胥は呉の首都の地形を観測し、水質を検証して、天地経緯に合わせて大きな城を立てた。
城の週長が四十七里、陸地と水路に八つの玄関を作って、天上地上八面来風と言う意味である。また小さい城を作って、週長十里、南、西、北に玄関を設けた。東側に玄関を作らないと言うのは、東の隣国の越国の光明を途絶つと言う意味である。
大城の西側の昌門は天門を闔閭に向けて開くと言う意味、楚も呉の西側にあるので、破楚門とも呼ばれている。 城邑が完成してから、米の蔵もいつく作られていた。
又、兵士を訓練するようと、呉王は子胥に命じた。
子胥:“戦争には、鋭い兵器が欠かせません。呉国の干将、莫邪ご夫婦は斉国の欧冶子の下で剣作りを勉強しているそうですが、わが国のために迎えましょう。”と言って、身内の武士椒丘訴と要離に頼んで、斉国へ行かせた。
椒丘訴は天下有名な勇士で、斉国の出身で地理にも詳しい。数日も立ってない内もう斉国の土地に踏み込んだ。淮河を渡って、馬に川水を飲ませる際、地元の人に言われた:
“この河に怪獣が居て、馬が食われる可能性があります、気をつけて下さい。”
話を聞いて、椒丘訴が大笑い、“俺の前で怪獣が出てくるかい?”
話終ったとたん、突然大騒ぎの音、河から大きな怪獣が現れて、椒丘訴の馬を河に引き込んで、あっと言う間に食ってしまった。
椒丘訴大いに怒って、服を脱いで裸のまま河に飛び込んだ。しかし怪獣は影も音もなくどこかに行ってしまった。
伴の要離が言った:“一頭の馬のために復讐しても仕方がないだろう。早く行こう。”
椒丘訴は頭を振って、“これは僕の名誉にかかるもんだ。その怪獣を殺さないとどこにも行かんぜ!”
このまま三日間、川岸で待ち伏せていた。やっと怪獣の居場所を見つけ出した。椒丘訴は剣を持って水中の中で二日間も戦って、その怪獣を切り倒した。しかし、自分も一つ目がやられて失明した。
怪獣を倒してから、二人は干将、莫邪のところに行って、懇願して呉に迎えてきた。
歓迎宴会で、椒丘訴は怪獣と戦う話をして、かなり自慢していた。ずっと黙っていた要離は椒丘訴を軽蔑していた:
“武士と言うのは、太陽と戦ったら、太陽を移動させない;悪魔と戦ったら足を動かず;敵と戦ったら声を出さず。生きて立ち向かい、死んで帰る。一匹の怪獣なのに貴様は馬も食われて、一つ目もやられて、恥ずかしいことなのに、ここで法螺吹くじゃないぞ!”と言い、その場を離れて家に帰った。
要離は妻に言った:“武士椒丘訴を軽蔑したので、復讐のためこいつは今夜襲ってくるだろう。すべてのドアを開けて待ちましょう。”
深夜になって、椒丘訴は要離の自宅へ行ってみたら、すべてのドアが開いたまま、要離が無防備に寝ている。椒丘訴は静かに入って、剣を抜き出して要離の首を掴んで言った:“お前は死ぬべき理由が三つ有る、知っている?”
“知らない。”
“お前は沢山の人前で俺を屈辱したので、これは死ぬべき一;家に帰ってドアも閉めず俺に入らせたのは、死ぬべき二;無防備に寝て、抵抗も間に合わない、これは死ぬべき三だ。お前はこの三つの理由で殺されても俺に怨恨しないだろう。”
“その理由が成り立たない。お前は武士として三つの失格が有って、知っている?”
“知らない。”
“沢山の人前で屈辱されてその場で復讐しなかったのは、失格一;俺の部屋に密かに潜入して咳きもせず、武士として失格二;剣を抜いてから俺にしゃべりだすのは失格三。お前は三つの失格点が有るのに、武士として恥ずかしくないの?”
椒丘訴は剣を棄てて、嘆いた:“今まで自分を天下一の武士だと思ったのに、今日は要離に負けてしまった。要離様こそ天下一の武士である。”
こうして、二人はまた昔のように仲良くして、干将、莫邪の剣作りを手伝っている。
干将、莫邪夫婦は五岳の精銅と七名山の精鉄を採用して、太陽と月が同時に出てくる時だけ精錬し始める。
精錬の火が燃え上がり、呉国の夜空を照らして、とても奇妙な光景。
精錬炉に囲んで、火の加減をするのは三百の童男処女である。干将、莫邪日夜監督して、後世に名剣を残したい。
三ヶ月間立って、夫婦二人は顔色も黒く焼けていた。しかし、精錬炉の中を覗いてみたら、精銅精鉄がなかなか溶けなかった。
“呉王に命じられて、剣を作って、三ヶ月間も出来てないのは、何か言えない事情があるでしょうか。”莫邪が夫に聞いた。
“本当に原因分からない。”
“今の精銅精鉄は神物であり、人間の気持ちと決意が届かなかったら溶けてくれないでしょう。”
“昔の師匠は同じ状況にあった。精銅と精鉄が融け合わなかった為、夫婦二人は一緒に精錬炉に飛び込んで、身を犠牲して名剣を作り上げた。それから剣を作る前、弟子たちは必ず誠心誠意山の上へ行って師匠を祭ってから鋳物を始まる。もしくは我々もなにか足りないじゃないか?”
莫邪言った:“師匠は名剣のために命まで犠牲できるなら、私たちは困る必要が無いでしょう。”
二人は髪と爪を切って、身の代わりに精錬炉に投げ入れて、自ら風力と火力を強くした。また百日間立って、銅と鉄が溶けて、剣の形になった。
陰陽二つの剣が出来て、二人は自分の名前を付けた:陽剣は干将と言い、陰剣を莫邪と呼んだ。これまで苦労して、夫婦は干将剣を密かに隠して、陰剣莫邪だけを呉王に捧げた。
呉王は大臣らを連れて、お寺で神様と先祖を参拝してから莫邪剣を受け取った。
ちょうど魯国の大臣季孫が呉国を訪問してきたので、呉王は剣を見せた。
その剣を眺めて、季孫は賛美した:“中華各国には十数本の名剣がありましたが、これを越える剣はございませんでしょう。こんな素晴らしい名器を作れるなら呉国は必ず覇業を遂げるでしょう。”
もっと詳しく見たら、剣の凸背には米ぐらいの欠陥を見つかった。
これは国が滅びる象徴で、呉国は覇業を作っても長くならないだろうと、季孫は心の中でつぶやいた。
また魚腸剣を見たら、季孫は急に息が苦しくなり、呉王に言った:“この短剣を持ってはいけません。魚腸剣の紋理が順序なく、殺気が溢れて、大臣がこれで国王を殺害する、息子はこれで父親を殺すでしょう。”
なお、越国から献上した湛盧剣を見せたら、季孫は思わず感嘆した:“これは正義の剣であります。賢明な国王しか身につける資格がありません。”
すると、呉王は魚腸剣を棄てて、莫邪と湛盧二本の名剣を身につけた。
季孫が国事を終らして、呉王と分かれるとき、
“今の天下英雄は誰でしょう”と聞かれたら、
季孫は答えた:“王僚の息子慶忌であります。”
闔閭二年秋、暗殺された父親の讐を報復するため、衛国に居る慶忌は兵馬を集めて、訓練を重ねた上、呉を攻める準備をしている。
呉王闔閭は伍子胥、白喜らを呼んで、討つ方法を検討する。
伍子胥は言った:“衛国までは楚、鄭国を挟んで、遠く離れて居ます。軍隊を派遣して討つなら大変苦労するでしょう。楽な方法はやはり王僚と同じ、暗殺したほうが賢明だと思います。”
“しかし前の専諸のような勇士はもう居ないでしょう。”
“要離という武士が専諸の上だと思います。”
すると要離を呼んで、呉王は見たら、不快になった:要離は普通の人よりずっと低く、女のように痩せて、弱弱しい、とても勇士には見えなかった。
大失望した呉王は要離に聞いた:
“君は何か出来る?”
“私は首都から千里離れた田舎に住んでいました。病気のように痩せていて、力もありません。真正面からの風に吹かれたら後ろに倒れます、後ろからの風に吹かれたら直ちに前に倒れてしまいます。しかし、王様の命令を受けたら全力をお尽くしします。”
呉王は長く黙っていた。内心で伍子胥を責める、こんな無用な人物を勧めてきたなんで・・・
“大王様は慶忌に悩まされているでしょう。私は彼を殺せます。”
“慶忌という人は知らないだろう。力があり、武術に精通し、仮に一万人を相手しても決して怖がらない。一瞬で走る獣を追い越える。百里を走っても疲れ知らず、飛んでくる矢を手で取れる。君は彼の相手にならん。”
“両軍対陣、力の勝負が避けられませんが、暗殺は謀略と機会があれば大丈夫です。”
“しかし、慶忌がそんな簡単に接近できないだろう。”
“家族を安楽して国の義務を果たさない人は不忠であります;家族を大事にして王様の憂患を取り除かない人は不義であります。私は犯罪者のように呉から逃げ出して、王様は私の右手を切って、私の家族を殺せば、慶忌が信用してくれるだろうと思います。”
翌日、右手が切られた要離は呉の首都から脱出した。呉王は要離の家族を全員殺して、市場で焼けた。
要離は楚、鄭、晋などの国を通って、人々に自分の冤罪を訴えた。間もなく衛国に到着して、慶忌に拝見した:
“呉王闔閭は非常に残忍な人で、私の右手を切って、また罪の無い我が家族を殺害しました。呉国に詳しい私は道を案内しますので、一緒に復讐させて頂きましょう。”
慶忌はすぐ要離を信用した。
慶忌は軍隊を整えて、揚子江から船で呉へ進軍した。
進軍三日目の夜、慶忌は船に立って、揚子江の夜景色を眺めている。要離は同じ船に乗っていて、右手がないため誰にも警戒されない。
秋の揚子江は静かで、両岸の葦が黄色を出して、風の中でさらさらと音を立つ。
連日の雨でせっかく晴れた日なので、景色を見ながら慶忌は詩を吟した:
江上寂寥秋色残、
一時風雨一時寒。
才息号角旌旗動、
将士出征帯甲眠。
突然慶忌の帽子が風に吹かれて、川に落ちてしまった。
要離が立って、周りの警備から一本の矛を借りて、帽子を取った。
帽子を取って、慶忌はちょうど要離に背を向けている。
要離は左手で矛を水平にし、風に乗って、全身の力で刺した。
背中から刺し、胸から出て、矛は慶忌の体を貫通した。