第一章
奸賊設計乱人倫
忠臣秉直入監牢

第二章
父子蒙冤成忠儀
英雄引箭退追兵

第三章
伍子胥路遇豪傑
太子建命喪他郷

第四章
子胥白首過昭関
漁父夜渡芦中人

第五章
公子光千金購剣
白州犁一朝誤身

第六章
公子計賺楚辺城
専諸夜奪魚腸剣

第七章
刺王僚専諸学芸
図覇業闔閭立国

第八章
干将鋳剣興呉都
要離断臂詐慶忌

第九章
揚子江頭添血跡
武聖宮中斬王姫

第十章
戦舒城龍成喪命
平民憤子常除奸

第十一章
撃越国智収勇将
隠韜晦賢臣遇主

伍子胥伝

第五章 公子光千金購剣 白州犁一朝誤身

呉国の公子光は、呉王王僚の従弟であり、呉国の将軍を勤めている。
 公子光は謀略に長じて、天下を取る大志を持ち、しかし好戦の従弟王僚に屈して、自分の事業を展開することができないため、常に王位を乗っ取り、反乱を計画している。
 この日、驚異の夢を見たので、呉都の有名な占い師公孫聖を呼んで、夢の解釈を願いした。
 “怪我をして、血の流れている虎が飛びかかって来て、わしは剣を握って立ち向かおうとしたら、その虎が動きを止めて、静かに座り、わしを眺めているという夢を昨夜見たが、どういう意味合いがあるでしょうか。”と公子光が夢を語った。
 公孫聖は考えもせず、答えた:“おめでとう、いい兆候の夢です。怪我を負った虎が飛びかかってくるのは、危難から脱出した大人物が将軍の下に身を寄せる意味であります。剣は権で、この上ない権力を握る兆候もあります。しかし血は戦いと暗殺の意味もありますので、死者が出るのが避けられないことでしょう。”
 公子光は大喜びで、賞金を多く与えた。
 公孫聖は家に戻って、妻に言った:“公子光はこれから呉の国王になる。この三年間以内に反乱を起こすだろう”。

 子胥は揚子江を渡り、呉の国土に踏み入った。これから身の危険が無くなり、楚への復讐はもはや時間の問題だ。緊張な日々、食わずに眠らず全身の疲れが襲ってきた。呉の首都の近くで倒れてしまった。
 知人もいないし、金も無くなった。子胥は水辺で洗濯をする女の子を見て、乞食をした:
 “少し食べ物を頂けませんでしょうか?”
 “母親を世話して一緒に住んでいて、私は今三十歳もなって独身の処女ですが、見知らぬ男子には食べさせてはいけません。”
 “しかし、窮屈な人を助けることで、他人の嫌疑を心配することは無いでしょう。”
 女子は再び子胥を眺めて、立派な人だと分かり、ご飯と汁を丁寧に渡した。
 子胥が二碗のご飯を食べ、食事を終わらしたのを見て、女子は:“まだ長い旅をなさるでしょう、なんでお腹一杯召し上がらないでしょうか?”
 子胥はお礼をして、女の子の名前を聞いてみたら、女子は:“二人は恥ずかしいことをしたので、名前を聞いても仕方が無いでしょう。あなた様は乞食人、あたしは洗濯女でございます。”
 子胥は黙って答えられなかった。そのまま女の子と別れ、呉の首都へ向かった。

 呉の首都(今の蘇州)は山紫水明、物産も豊かで人間は聡明且つ礼儀を知る。各国から集めてきた商人たちが活躍している。呉の刺繍は天下一で、それを求めてくる人が呉の街を賑わっている。
 公孫聖も街の中心地で占いの店を作った。よく当たる名誉があるから、呉の人々に尊敬され、商売も順調に進んでいる。
 公孫聖は幼い時、孫武と一緒に鬼谷子先生について勉強した。孫子は兵法を学んで、公孫聖は天文地理占いを覚えた。
 この日、公孫聖相変わらず店を開き、客を待つ間、外から騒ぎを聞いた。
 出てみると、街には一人の男が十数人に囲まれて、どうやら男は身持ちの剣を売るようだ:
 “これは先祖から伝わってきた宝物で、今は生活に困るから一万金で売るつもりです。”
 さすがの公孫聖も興味津々で、その剣を見て、確か素晴らしいものだ:氷のような寒気を持ち、薄青く光って、鏡のように日差しを反射している。剣の柄には七つの宝石が北斗七星の形で飾られている。
 公孫聖は感嘆しながらその男に言った:“これは素晴らしい剣ですが、一つ城を買える一万金の価値にはどうにもならないでしょう。せいぜい千金ぐらいの値段じゃないですか?”
 男は剣を収めて、公孫聖に言った:“この剣は確か千金の値段ですが、この剣の持ち主は一万金以上の価値があります!”
 周りの衆人は“君は剣を売りたいのか、自分を売りたいのか”と大笑いして、離れて行った。
 公孫聖はその話にびっくりして、男を見ると、
 その男は身体雄大、巨眼爛爛、これは将軍の相に当たる;天生奇骨、容貌魁偉、これは才能ある面相である;30過ぎてないのに真っ白な髪から見れば、何かの屈辱を持っているじゃないか・・・
 公孫聖はその男の名前を伺いたら、
 男は:“今は答える時期じゃない。将来は俺の名は各国を怯えさせるだろう。”と言って、立ち去った。
 公孫聖は店に戻って、従者に言った:“今日は早めに店を閉めて、わしは公子光将軍の所に行ってくるから。”

 万金で剣を売る話は呉国中に広がって、殆どの人は冗談話として扱っている。公子光も部下からその話を聞いた。
 かなり興味があった。そんな時、公孫聖が来た。
 “わが国には素晴らしい人物が現れました。”公孫聖が言った。
 “どんな人物でしょう。”
 “その人物を手に入れたら、覇業も遂げられます。こんな人が首都に出たのは、我が呉国は天に恵まれる兆候だと思います。”
 “えっ!”公子光は立ち上がった。反乱を図っているので、立派な人材が欠けてはいけない。公子光は飢えているように天下の人材を求めているところだ。
 “その人物欲しかったら、明日公子様一万金を用意し、買い取ったほうがいいと思います。”
 “一万金!”これは公子光の財産の半分に当たる。
 “その人は金をほしいではないと思いますけど、でもその価値になるでしょう。”
 翌日、公子光は数人の部下を連れて、目立たないように普段着に着替えした。
 お昼頃、公孫聖の店の近くでまだ騒ぎが起きた。
 例の男は剣を持って、一万金で売るよ!って大きい声で叫んでいる。
 公子光はその男を見た瞬間、驚いた:男は穏やかな歩き方、乗馬がうまいだろう;有力で機敏な手首、いろんな兵器に長じるだろう;鋭い目つき、知恵を持つだろう。
 “その剣を買い取ります!”公子光は言いながら、その男に近づく。
 男は公子光を見たら、書生の服装だが、富貴の気が隠せない;笑顔をしているが、王者の尊厳が盛れている。この人は絶対普通じゃないと、男も分かった。
 “貴様が買うなら、千金でよろしい。”男はお礼をして言った。
 “一万金を用意してますよ!”公子光はお礼を返して、そう言った。
 “無能な人には一万金も安すぎる、この剣。しかし、貴様にはこの剣を使えば、天下を征服できるでしょう。この宝物の剣によい使い道が有れば、安くでもよろしいですから、本当に千金でよろしいですよ。”
 “よろしい!じゃあ、僕の家に来てくださる?”
 すると、子胥はこう工夫して、公子光と知り合った。二人は文武の話から天下の政治まで連日徹夜まで話し合った。

 楚平王は忠臣伍氏一家を殺害して、大臣らは奸臣の費無忌を恐れて、諫言も少なくなってきた。
 唯一楚平王に近づく大臣は白州犁である。白州犁は優れる政治家で、奇抜な言論は楚王を魅了した。何日間夜から朝まで話をして、楚王は少しも伍氏一家を誅殺したことに悔しい。
 費無忌は常に白州犁を嫉妬しているが、罪を就かせる理由がなかった。偶然秦女皇後と相談して、ある案を考え出した。
 費無忌は楚平王に言った:“大王様はそんなに白州犁を信用して、国中みんな知っていることです。そのため、白州犁の家へ行って、宴会を作れば、大王様が忠実な大臣を敬愛することを各国に知られるでしょう。そうすると、沢山の人材が楚国に来るじゃないかと思います。”
 楚平王はよいと言って、白州犁に翌日の宴会の用意をさせた。
 費無忌はまた白州犁に言った:
 “楚王は勇敢で武術を好んで、兵器を見ると喜ぶから、是非玄関や庭や部屋にいろんな兵器を並べ、楚王を喜ばすべきだと思います。”
 翌日、費無忌が楚王を伴って、白州犁の自宅へ行った。
 玄関に入ったら、庭に沢山の兵器が並べて、日差しの中で眩しく輝いて、部屋にも刀、槍、剣、斧、錘、叉などまるで戦場のように。
 驚いた楚平王に、費無忌叫んだ:“大王様早く逃げましょう~、白州犁は大王様を謀殺しようとしているじゃないか!”
 楚王は急いで王宮に戻り、将軍を呼んで、白州犁一家全員を誅殺しろと命じた。
 白州犁一家はそのまま滅ぼしたが、ただ一人の孫の白喜はちょうと外出したので、この災難から逃れた。
 各国の諸候、白州犁の惨死を聞いて、みんな嘆いた:“これから楚国に忠実な人がいなくなるだろう。”
 白喜は一家殺害されたことを聞いて、刀を取って、戸を突き破る勢いで国境の守備を切り倒し、呉へ逃げてきた。そして、子胥に会って、泣きながら事情を説明した。
 公孫聖密かに子胥に勧告した:“その白喜の面相を見れば、鷹のような目付き、虎のような歩き方、こんな人は功名を貪り、血に飢えていると思いますので、遠ざかったほうがいい。”
 子胥は:“僕の経歴は白喜と同じ、復讐の意欲は日々強くなる。瀬水両岸の童謡のように:同病の人はお互いに憐れむ、同憂の人はお互いに助ける。驚いて飛び出す鳥の群れが一緒に飛んで、一緒に休む。瀬水の下流は渦を巻き、ぐるぐる回って一斉に東へ流れてゆく。胡地の馬は常に北風に向かって立つ、越地の燕は常に朝日に向かって遊ぶ。誰でも自分と同じ運命の人に親しむ、誰でも失った家族を悲しむじゃないでしょうか。”
 と言って、白喜と仲良くし、一緒に公子光の門下に入った。