第五章 公子光千金購剣 白州犁一朝誤身
呉国の公子光は、呉王王僚の従弟であり、呉国の将軍を勤めている。
公子光は謀略に長じて、天下を取る大志を持ち、しかし好戦の従弟王僚に屈して、自分の事業を展開することができないため、常に王位を乗っ取り、反乱を計画している。
この日、驚異の夢を見たので、呉都の有名な占い師公孫聖を呼んで、夢の解釈を願いした。
“怪我をして、血の流れている虎が飛びかかって来て、わしは剣を握って立ち向かおうとしたら、その虎が動きを止めて、静かに座り、わしを眺めているという夢を昨夜見たが、どういう意味合いがあるでしょうか。”と公子光が夢を語った。
公孫聖は考えもせず、答えた:“おめでとう、いい兆候の夢です。怪我を負った虎が飛びかかってくるのは、危難から脱出した大人物が将軍の下に身を寄せる意味であります。剣は権で、この上ない権力を握る兆候もあります。しかし血は戦いと暗殺の意味もありますので、死者が出るのが避けられないことでしょう。”
公子光は大喜びで、賞金を多く与えた。
公孫聖は家に戻って、妻に言った:“公子光はこれから呉の国王になる。この三年間以内に反乱を起こすだろう”。
子胥は揚子江を渡り、呉の国土に踏み入った。これから身の危険が無くなり、楚への復讐はもはや時間の問題だ。緊張な日々、食わずに眠らず全身の疲れが襲ってきた。呉の首都の近くで倒れてしまった。
知人もいないし、金も無くなった。子胥は水辺で洗濯をする女の子を見て、乞食をした:
“少し食べ物を頂けませんでしょうか?”
“母親を世話して一緒に住んでいて、私は今三十歳もなって独身の処女ですが、見知らぬ男子には食べさせてはいけません。”
“しかし、窮屈な人を助けることで、他人の嫌疑を心配することは無いでしょう。”
女子は再び子胥を眺めて、立派な人だと分かり、ご飯と汁を丁寧に渡した。
子胥が二碗のご飯を食べ、食事を終わらしたのを見て、女子は:“まだ長い旅をなさるでしょう、なんでお腹一杯召し上がらないでしょうか?”
子胥はお礼をして、女の子の名前を聞いてみたら、女子は:“二人は恥ずかしいことをしたので、名前を聞いても仕方が無いでしょう。あなた様は乞食人、あたしは洗濯女でございます。”
子胥は黙って答えられなかった。そのまま女の子と別れ、呉の首都へ向かった。
呉の首都(今の蘇州)は山紫水明、物産も豊かで人間は聡明且つ礼儀を知る。各国から集めてきた商人たちが活躍している。呉の刺繍は天下一で、それを求めてくる人が呉の街を賑わっている。
公孫聖も街の中心地で占いの店を作った。よく当たる名誉があるから、呉の人々に尊敬され、商売も順調に進んでいる。
公孫聖は幼い時、孫武と一緒に鬼谷子先生について勉強した。孫子は兵法を学んで、公孫聖は天文地理占いを覚えた。
この日、公孫聖相変わらず店を開き、客を待つ間、外から騒ぎを聞いた。
出てみると、街には一人の男が十数人に囲まれて、どうやら男は身持ちの剣を売るようだ:
“これは先祖から伝わってきた宝物で、今は生活に困るから一万金で売るつもりです。”
さすがの公孫聖も興味津々で、その剣を見て、確か素晴らしいものだ:氷のような寒気を持ち、薄青く光って、鏡のように日差しを反射している。剣の柄には七つの宝石が北斗七星の形で飾られている。
公孫聖は感嘆しながらその男に言った:“これは素晴らしい剣ですが、一つ城を買える一万金の価値にはどうにもならないでしょう。せいぜい千金ぐらいの値段じゃないですか?”
男は剣を収めて、公孫聖に言った:“この剣は確か千金の値段ですが、この剣の持ち主は一万金以上の価値があります!”
周りの衆人は“君は剣を売りたいのか、自分を売りたいのか”と大笑いして、離れて行った。
公孫聖はその話にびっくりして、男を見ると、
その男は身体雄大、巨眼爛爛、これは将軍の相に当たる;天生奇骨、容貌魁偉、これは才能ある面相である;30過ぎてないのに真っ白な髪から見れば、何かの屈辱を持っているじゃないか・・・
公孫聖はその男の名前を伺いたら、
男は:“今は答える時期じゃない。将来は俺の名は各国を怯えさせるだろう。”と言って、立ち去った。
公孫聖は店に戻って、従者に言った:“今日は早めに店を閉めて、わしは公子光将軍の所に行ってくるから。”
万金で剣を売る話は呉国中に広がって、殆どの人は冗談話として扱っている。公子光も部下からその話を聞いた。
かなり興味があった。そんな時、公孫聖が来た。
“わが国には素晴らしい人物が現れました。”公孫聖が言った。
“どんな人物でしょう。”
“その人物を手に入れたら、覇業も遂げられます。こんな人が首都に出たのは、我が呉国は天に恵まれる兆候だと思います。”
“えっ!”公子光は立ち上がった。反乱を図っているので、立派な人材が欠けてはいけない。公子光は飢えているように天下の人材を求めているところだ。
“その人物欲しかったら、明日公子様一万金を用意し、買い取ったほうがいいと思います。”
“一万金!”これは公子光の財産の半分に当たる。
“その人は金をほしいではないと思いますけど、でもその価値になるでしょう。”
翌日、公子光は数人の部下を連れて、目立たないように普段着に着替えした。
お昼頃、公孫聖の店の近くでまだ騒ぎが起きた。
例の男は剣を持って、一万金で売るよ!って大きい声で叫んでいる。
公子光はその男を見た瞬間、驚いた:男は穏やかな歩き方、乗馬がうまいだろう;有力で機敏な手首、いろんな兵器に長じるだろう;鋭い目つき、知恵を持つだろう。
“その剣を買い取ります!”公子光は言いながら、その男に近づく。
男は公子光を見たら、書生の服装だが、富貴の気が隠せない;笑顔をしているが、王者の尊厳が盛れている。この人は絶対普通じゃないと、男も分かった。
“貴様が買うなら、千金でよろしい。”男はお礼をして言った。
“一万金を用意してますよ!”公子光はお礼を返して、そう言った。
“無能な人には一万金も安すぎる、この剣。しかし、貴様にはこの剣を使えば、天下を征服できるでしょう。この宝物の剣によい使い道が有れば、安くでもよろしいですから、本当に千金でよろしいですよ。”
“よろしい!じゃあ、僕の家に来てくださる?”
すると、子胥はこう工夫して、公子光と知り合った。二人は文武の話から天下の政治まで連日徹夜まで話し合った。
楚平王は忠臣伍氏一家を殺害して、大臣らは奸臣の費無忌を恐れて、諫言も少なくなってきた。
唯一楚平王に近づく大臣は白州犁である。白州犁は優れる政治家で、奇抜な言論は楚王を魅了した。何日間夜から朝まで話をして、楚王は少しも伍氏一家を誅殺したことに悔しい。
費無忌は常に白州犁を嫉妬しているが、罪を就かせる理由がなかった。偶然秦女皇後と相談して、ある案を考え出した。
費無忌は楚平王に言った:“大王様はそんなに白州犁を信用して、国中みんな知っていることです。そのため、白州犁の家へ行って、宴会を作れば、大王様が忠実な大臣を敬愛することを各国に知られるでしょう。そうすると、沢山の人材が楚国に来るじゃないかと思います。”
楚平王はよいと言って、白州犁に翌日の宴会の用意をさせた。
費無忌はまた白州犁に言った:
“楚王は勇敢で武術を好んで、兵器を見ると喜ぶから、是非玄関や庭や部屋にいろんな兵器を並べ、楚王を喜ばすべきだと思います。”
翌日、費無忌が楚王を伴って、白州犁の自宅へ行った。
玄関に入ったら、庭に沢山の兵器が並べて、日差しの中で眩しく輝いて、部屋にも刀、槍、剣、斧、錘、叉などまるで戦場のように。
驚いた楚平王に、費無忌叫んだ:“大王様早く逃げましょう~、白州犁は大王様を謀殺しようとしているじゃないか!”
楚王は急いで王宮に戻り、将軍を呼んで、白州犁一家全員を誅殺しろと命じた。
白州犁一家はそのまま滅ぼしたが、ただ一人の孫の白喜はちょうと外出したので、この災難から逃れた。
各国の諸候、白州犁の惨死を聞いて、みんな嘆いた:“これから楚国に忠実な人がいなくなるだろう。”
白喜は一家殺害されたことを聞いて、刀を取って、戸を突き破る勢いで国境の守備を切り倒し、呉へ逃げてきた。そして、子胥に会って、泣きながら事情を説明した。
公孫聖密かに子胥に勧告した:“その白喜の面相を見れば、鷹のような目付き、虎のような歩き方、こんな人は功名を貪り、血に飢えていると思いますので、遠ざかったほうがいい。”
子胥は:“僕の経歴は白喜と同じ、復讐の意欲は日々強くなる。瀬水両岸の童謡のように:同病の人はお互いに憐れむ、同憂の人はお互いに助ける。驚いて飛び出す鳥の群れが一緒に飛んで、一緒に休む。瀬水の下流は渦を巻き、ぐるぐる回って一斉に東へ流れてゆく。胡地の馬は常に北風に向かって立つ、越地の燕は常に朝日に向かって遊ぶ。誰でも自分と同じ運命の人に親しむ、誰でも失った家族を悲しむじゃないでしょうか。”
と言って、白喜と仲良くし、一緒に公子光の門下に入った。