第四章 子胥白首過昭関 漁父夜渡芦中人
太子勝と別れ、子胥は先頭に呉へ向かう。
ばれないように、出来るだけ昼間に古い寺や墓地で休み、夜になったら出発する。途中どこにも指名手配の顔絵が張られているのを見て、子胥は目立つ弓と馬を棄てて、慎重に道を選び、徒歩で行く。
数日の旅、もう楚と呉の国境に近づいた。最後の難関は昭関で、通らなければならない。しかし、昭関の警備は厳しくて、夜の城の玄関が閉められて、昼間に一人一人を検査し、厳しく尋問してから通らせる。子胥の件で、ちょっと顔似た人がいたらすぐ兵士に逮捕される。
子胥はここまできても、仕方がない。昭関の玄関の近くで徘徊し、なかなか良策が出てこない:庶民を偽って関を出るのが不可能;ここの守備は百戦磨きの軍隊で、一人の力で突破するのも不可能だ。
悩んでいるうち、突然誰か後ろから肩を叩いて、声をかけて来た:“兄貴!お久しぶりだね~!”
後ろの人を見ると、友人の申包胥だった。
申包胥は慌てて、子胥を人影のいないところに連れて聞いた:“お前は大胆だな~~!この昭関はまさかお前のためにこんなに厳しくなったんじゃ!”
幼い時から申包胥は子胥と一緒に文武術を勉強し、今は朝廷の大臣になって、公用で呉国から帰ってきて、昭関を寄って将軍龍成を訪れているところだ。
子胥は挨拶も忘れて、申包胥の手を握った:“兄さん!俺はこの関を出たいから、何とかしてくれ!”
申包胥は頭を振った:“無理、無理!今日はやめて、俺の泊まる旅館に行って考えよう。ここは危険だから。”
申包胥は伍子胥を旅館に連れて行って、酒を用意し、使い人を下がらせて、話を聞いた:
“子胥兄、これから呉へ行くのかい?”
子胥:“晋王の悪意で、太子建は鄭で命を失った。呉国は人材を求めて大業を作りたいということを聞いたので、そっちに行くつもりだ。楚平王は俺の父親と兄を殺害して、ご存知でしょう。”
申包胥は嘆いた:“君に復讐しろ!って言ったら、俺は楚王に不忠だ。復讐を忘れろ!って言ったら、友人に不義だ。こんなことを俺に聞かないでくれる?”
子胥:“父母を殺した人と同じ天地に生きていけない、兄弟を殺した人と同じ国に共存できない、友人を殺した人と同じ村に生活できない。これから俺は必ず報復して、父兄の恥を雪ぐ。”
申包胥:“君の才能なら出来るだろう。でも、君は楚を破滅させるなら俺は楚を復興できる、君は楚を危害できるなら俺は楚を安定させられる。楚は庄王から覇業を遂げて、今も天下一の強い国で、決して君の一人の力で滅ぼすことが出来ない。君は楚国の人々を軽蔑してはいけない。”
“しかし、今の昭関をどうやて通れるの?”
“方法がないと思う。君は守備の龍成将軍を知ってるだろう。忠実な将軍で武術に強いし、数万の軍隊を指揮している。君の顔絵がみんな覚えているので、神様でも助けてあげる仕方がないだろう。”
子胥は酒を飲む気持ちがなくなり、父兄の讐を思い出して、思わず涙が出た。
申包胥はそれを慰めるのも出来ず、子胥に言った:“とりあえず明日は考えろ。君も連日の旅で大変だったので、早く休憩してくれ。”
子胥は転々で何度も寝返りをうち、なかなか寝付けない。この昭関に阻止され、通れなかったら、父と兄の恥をすすぐことはいつ出来るだろう・・・焦りながら、座りだして朝明けを待っている。
申包胥も一晩考えていたが、なかなかいい方法が頭に浮かばない。朝早く起きて、相談しようと子胥の部屋に行ったら驚いた:“子胥兄!鏡を見て、君はどうしたんだ?!”
子胥は鏡を見て、信じられない光景:
髪がすべて雪のように白くて、疲れた顔と憂い苦しむ目、まるで老人のように。
子胥倒れそうに:“嗚呼!復讐してないのに、自分が先に老死するもんか!”
申包胥は逆に拍手して、喜んでいた:“子胥兄!こんな様子なら誰も見分けが出来ないだろう!昭関を通れるじゃ!”
子胥も悟って、手で頭を叩いて嬉しくなった。
申包胥は子胥に言った:“悲しい!髪が一晩悩みで真っ白になった!君の気持ちが分かったよ。今日の夕方、僕は龍成将軍を宴会に誘って、君はそのとき昭関を出ろ!”
その日の夕方、龍成将軍は申包胥の宴会に誘われて、昭関を離れた。二人は旧友で、久しぶりの遇いで酒を飲みながら楽しく話し合った。
宴会の最中で、突然部下が入って報告した:“昭関出て呉へ向かうおかしい人がいると巡回の兵士が発見しました。白髪の老人模様ですが、顔が逃亡者伍子胥ととても似ております。”
龍成は慌てて立ち上がって、申包胥に:“もしくは偽装じゃないか。伍子胥一家は可哀そうだけど、俺は楚の将軍で、自分の責任を忘れてはいけない。”
と言いながら軍隊を集めて、申包胥を席に残したまま追いかけた。
子胥は徒歩で呉へ向かう。前は大きな揚子江があって、それを渡れば呉の国に入る。
そのとき、後ろから騒ぎ声が聞こえた。見ると、数千人馬に乗って走り来る兵士が追ってきた。
子胥は驚いて、揚子江の岸まで走って、渡り船を探す。
揚子江の真ん中に一葉の小船があった。一人年寄りの漁父は悠々と漕いで、子胥の焦る呼び声に気づいた。
漁父は子胥のところへ急いで漕いで、ふと子胥の後ろに近づいた軍隊を見かけた。漁父船を止め、釣具を出しながら歌い始めた:
“夕日が西に沈み、今夜君とここで会う。
誰にも邪魔されないように、
月の出るのを待つ。”
子胥はその歌の意味を分かって、慌てて岸の葦に身を隠した。
龍成将軍は兵士らを連れて、揚子江を見れば、川には漁父しかいない。周りの葦は盛んに栄えて、静かで人影もいない。
すると、川沿って他のところへ追い探しに行った。
日が完全に沈んだ。揚子江両岸は静かで、風が葦を吹いて、秋の雰囲気を作っている。月が薄い雲の中から出て、優しく子胥の身影を映している。
この朦朧のなか、漁父は再び歌を始めた:
“月が出て、月が出て、
我が心は悲しくなる
なんで川を渡らないのか
何を怖がって、何を待つのか?
長い旅が君を待っているだろ
この小さい船が君の哀愁を
全部乗せ切れるかな?
葦に隠れた人よ”
子胥は葦から飛び出して、船に乗って、漁父にお礼をした。
漁父は笑った:“君はその名高い伍子胥様だろう。軍隊に追いかけられたときもう分かったよ!”
揚子江を渡って、子胥再び感謝し、腰に付けている宝剣を外し、漁父に差し出した:
“これは父上の剣で、楚庄王から頂いた宝物です。剣には宝石の北斗七星が飾って、百金の価値があります。今日助けられたお礼として差し上げます。”
漁父は:“楚国の命令で、伍子胥を捕まる人に大きい賞金を与える。わしは万金を棄てて、この百金の剣を貪るの?君は復讐のために使いなさい。”と言って、堅く断った。
子胥は漁父の名を聞いたら、
漁父は:“今の世、天下不安定で、罪を犯した二人は揚子江で出会い、すべては縁起だろう。名前を聞いても無意味だ、君は芦中人って、わしは漁父って、これでいいじゃない?これから偉い人物になったら今日の出来事を忘れなければいい。”
子胥ははいと言って、宝剣を身につけて、漁父と別れた。