第三章 伍子胥路遇豪傑 太子建命喪他郷
宋国はだんだん近づいてきて、後二三日の旅で楚を出るだろう。 楚の守備もだんだん少なくなったため、子胥は大道に出て目の前の村に入った。
連日の旅で、人間は大変苦労したが、馬も疲れきってしまって、十分な休みが必要だ。
山のふもとにある村で、意外に大きかった。村に出入りする人も多く、宋国と貿易する商人が賑わって、旅館が何軒もある。
村に入ったとだん、突然騒ぎ声が聞こえてきた。子胥は馬を止めてじっと見ると、村に十数人が一人の男を囲んで、殴り合っている。
男は30歳ぐらい、黒くて暴れる顔、立派な体付き、怒鳴りながら空手で衆人と戦っている。相手が数十人もいるけど、次々と倒れされていく。
男の拳法は巧妙で、衆人の隙間に周旋し、強いパンチで相手を狙い、百中百発。やがて衆人は男に対抗できなくなり、逃げ始めた。
男は笑いながら、逃げる人を追いかける。まるでトラが羊を捕食する感じで相手らを愚弄している。
ところで突然一人の主婦は子胥の前を通って、その男に向けて叫んだ:“馬鹿な男め!また喧嘩してるかい?!”
その声を聞いたら、男は急に追い殴りをやめて、大人しく戻って来て、その女に謝り始めた。
子胥は思わず笑い声を出した。
男は汗を拭きながら、子胥を睨んだ:“お前は何を笑ってるんだ!俺と喧嘩したいのか?”
子胥は馬に乗ったままお礼をして、笑いを我慢して言ってた:“君の戦い振りを見れば、立派な男ですが、何でこの女を怖がってるんですか?”
男は:“なにかこの女ってだよ!俺の女房だぜ!”と不機嫌に答えた。
話しようとしたら、村から数名の兵士が出てきた。兵隊の後ろから出てきた馬に乗っている長官はブチを指しだして、男に:“誰が喧嘩してるかと思ったら、また君かよ!今度絶対許さんぞ!”と言って、兵士に男を捕まろうと命じた。
子胥はその長官の服飾をみると、県官だと分かった。県官は三十代で、弱い書生のように、長い鬚、細い眉毛、落ち着く目。子胥は密かに感嘆した:まさかこの村にもこんな立派な人物もいたのか・・・と、思っているとき、県官は子胥をも気づいた。
県官は子胥に軽く手を上げて:“そちらの旅人よ、お茶一杯飲みに来ない?”と、誘った。
断ったら疑われるじゃないかと思って、子胥は馬から降りてお礼をし、“お邪魔いたします”と返事した。
官舎に着いたら、県官は喧嘩する男を閉じ込めろと兵士に命じ、子胥を客間に誘って、お茶を入れた。
二人は座って、県官は鬚を撫でながら、聞いた:“君はどこからいらっしゃったの?”
子胥:“郢から参りました。商売で宋へ行く予定ですが。”
県官は微笑んで、子胥の弓を見ながら小さい声で呟いた:“いい商売をしてるかな?楚を売るつもりだろう。”
子胥思わず立ち上がって:“どういう意味でございますか?”
県官は動かず、“その弓を見て、君は伍子胥さんじゃないの?可哀想に、お父兄様は賢人なのに、無惨な運命だった。私はこの件から見れば、楚はそろそろ崩壊するじゃないかと思うんだ。”
子胥は不安しながら、“ご氏名を伺ってもよろしいでしょうか?”
県官は:“僕は文種だと申しござる。三年前君のお父さん伍奢様は斉国へ太子の妃を迎えに行く途中、この村を通りかかった。僕はその時、まだ普通の庶民で、大志を抱いて、よく村人に誤解された。ところで伍奢様だけは僕の才能を見出して、楚王に報告し、県官の位に就かせた。いつもどう恩返しをすればと思っているけど、伍奢様は楚王に誅殺されてしまった。前日首都から指名手配の顔絵が来たので、君を見ればすぐ分かった。まさか今日は伍奢様の息子と出会って、悲しい上うれしいことだ。”
子胥は涙が出て:“父上と兄は讒言で殺されて、これから私は他国の力を借りて、復讐しなければなりません。先生は凡人ではないですから、何か助言を頂けますでしょうか?”
文種は言った:“太子建は大志に足りず、謀略も足りない、将来の立派な君王になるとは思わない。宋は戦争嫌いな国で、周辺の魯、斉、韓、晋などの人々は穏やかに生活し、愉快に働く、決して戦争を起こす国ではない。
南の呉国は山紫水明、聡明且つ勇敢。今は飢えているように人材を求めていて、覇業を企んでいる。君が北上をやめて、呉へ行くべきだと思う。僕は友人の範蠡の相談を待ち、これから県官をやめて、南へ行くつもりだ。”
二人は話がはずんで、酒を飲みながら深夜まで話し合った。
翌日、子胥は文種に別れの挨拶をして、ついでに喧嘩の男を釈放すると文種に願いした。
文種はいいと言って、その男を牢獄から出して、連れてきた。
名前を聞いたら、男は:
“僕は専諸だと申しござる。幼いから剣術を学び、天下一の技を身につけた。”
なんで妻に恐れているかと聞いたら、専諸は:
“何で笑うの?僕の顔を見て、そんな愚痴な人間ではないだろう。僕は一人に屈しているけど、万人上の才能を持っている。楚国は大きいけど、俺に尊敬される英雄は伍子胥一人しかいない。”
文種と子胥二人思わず大笑いした。文種は子胥を指差して、“只今本人がいるぞ!”
専諸は慌ててお礼をして、“まさかずっと憧れている人物は目の前に現れた!失礼なところはお許しください。”
子胥もお礼を返し、“私は今犯人の身で、他国行き、力を借りて復讐しなければならない。専諸様のような勇士がこれから必要だと思いますので、どうか友になってください。”
専諸は喜んで答えた:“必要ならいつでもいい、僕を呼んでください!”
ここで、子胥は文種と専諸に別れ、宋国へ向かった。
太子建はすでに宋国から脱出した。
宋の大臣華氏と向氏は政権を奪うため、宋王の元公に反乱を起こした。もともと平和な国で今は血塗れている。
亡命者の身で、この反乱の中で利用されるか誅殺されるかどっちかの運命だから、太子は息子の勝をつれて、数人の従者に守られて、隣国の鄭に逃げてきた。
鄭国の人々は太子の経歴を知り、深く同情し、この上ない礼儀で好遇している。太子建は感激しながら居住し、間もなく子胥も宋から辿り着いて、二人は日夜相談し、将来を計画している。
鄭は小さい国で、豊かな生活をしているが、兵力は不足し、後ろ楯にするには足りないと思って、建は鄭王に提案した:“鄭の周りは大国で、どの国から攻めてきても抵抗できないと思います。もっと積極的な外交手段を使い、周辺国と友好同盟を結び、外敵を防ぎ、国を守るべきだと思います。”
鄭王は嬉しくて、よいと言った。
太子は鄭の大使となり、先に覇王だった晋に出発した。
晋王の頃公は昔から鄭を狙っていた。しかし出兵の理由もないし、太子の到来はまるで天贈りの好機会だと思う。
宴会の後、晋頃公は太子と密談した:
“太子は鄭と親しい関係を持ち、鄭に信用されている。そこで、晋軍は外から攻めて、太子は我が晋のために内応してくれれば、きっと鄭を乗っ取りできるだろう。鄭を滅ぼして、太子は鄭の国王になり、我が晋と手を組んでいれば、どんな事業でもできるだろう。”
太子は驚いて、帰って子胥に相談した。
子胥は:“これはいけないことです。鄭は我々を暖かく接してくれて、恩返しをすべき理屈なのに、反乱を謀らんでいたら神様も怒るだろうと思います。そして、晋は鄭を滅ぼしても、太子様を国王にするわけもないでしょう。はぜひ晋の話を聞き入れないようにしてください。”
太子:“これは確かいけないことだが、でも成功すれば君は早く復讐も出来るし、私も早く帰国できるだろう。万が一を考えて、私の息子の勝を君に頼もう”
このために、太子は欲心を起こして鄭に引き返した。しかし、まだ好機が到来してないうちに、たまたまあることで従者を殺そうとしたので、従者は鄭王に太子の陰謀を訴えた。驚いた鄭王は直ちに大臣らを集めて、太子建を誅殺してしまった。
騒ぎの中、子胥は太子建の息子勝を背負って、剣で従者数人と重囲を突破して、鄭を出た。
子胥は文種の話を思い出して、南の呉国へ行くと決意した。しかし、鄭から呉へ行く途中、楚国を通らなければならない。危険が満ちている旅で、子胥は従者らに言った:
“私の顔が楚国に知られている。一緒に行くと、太子の勝様までに危険を招く。君らは忠実な方々で、勝様を守ってゆっくりと楚を通ってください。私一人で先に呉へ行って、頓着したら太子を迎えられるだろう。”