第一章
奸賊設計乱人倫
忠臣秉直入監牢

第二章
父子蒙冤成忠儀
英雄引箭退追兵

第三章
伍子胥路遇豪傑
太子建命喪他郷

第四章
子胥白首過昭関
漁父夜渡芦中人

第五章
公子光千金購剣
白州犁一朝誤身

第六章
公子計賺楚辺城
専諸夜奪魚腸剣

第七章
刺王僚専諸学芸
図覇業闔閭立国

第八章
干将鋳剣興呉都
要離断臂詐慶忌

第九章
揚子江頭添血跡
武聖宮中斬王姫

第十章
戦舒城龍成喪命
平民憤子常除奸

第十一章
撃越国智収勇将
隠韜晦賢臣遇主

伍子胥伝

第三章 伍子胥路遇豪傑 太子建命喪他郷

宋国はだんだん近づいてきて、後二三日の旅で楚を出るだろう。 楚の守備もだんだん少なくなったため、子胥は大道に出て目の前の村に入った。
 連日の旅で、人間は大変苦労したが、馬も疲れきってしまって、十分な休みが必要だ。
 山のふもとにある村で、意外に大きかった。村に出入りする人も多く、宋国と貿易する商人が賑わって、旅館が何軒もある。

 村に入ったとだん、突然騒ぎ声が聞こえてきた。子胥は馬を止めてじっと見ると、村に十数人が一人の男を囲んで、殴り合っている。
 男は30歳ぐらい、黒くて暴れる顔、立派な体付き、怒鳴りながら空手で衆人と戦っている。相手が数十人もいるけど、次々と倒れされていく。
 男の拳法は巧妙で、衆人の隙間に周旋し、強いパンチで相手を狙い、百中百発。やがて衆人は男に対抗できなくなり、逃げ始めた。
 男は笑いながら、逃げる人を追いかける。まるでトラが羊を捕食する感じで相手らを愚弄している。

 ところで突然一人の主婦は子胥の前を通って、その男に向けて叫んだ:“馬鹿な男め!また喧嘩してるかい?!”
 その声を聞いたら、男は急に追い殴りをやめて、大人しく戻って来て、その女に謝り始めた。
 子胥は思わず笑い声を出した。
 男は汗を拭きながら、子胥を睨んだ:“お前は何を笑ってるんだ!俺と喧嘩したいのか?”
 子胥は馬に乗ったままお礼をして、笑いを我慢して言ってた:“君の戦い振りを見れば、立派な男ですが、何でこの女を怖がってるんですか?”

 男は:“なにかこの女ってだよ!俺の女房だぜ!”と不機嫌に答えた。
 話しようとしたら、村から数名の兵士が出てきた。兵隊の後ろから出てきた馬に乗っている長官はブチを指しだして、男に:“誰が喧嘩してるかと思ったら、また君かよ!今度絶対許さんぞ!”と言って、兵士に男を捕まろうと命じた。
 子胥はその長官の服飾をみると、県官だと分かった。県官は三十代で、弱い書生のように、長い鬚、細い眉毛、落ち着く目。子胥は密かに感嘆した:まさかこの村にもこんな立派な人物もいたのか・・・と、思っているとき、県官は子胥をも気づいた。
 県官は子胥に軽く手を上げて:“そちらの旅人よ、お茶一杯飲みに来ない?”と、誘った。
 断ったら疑われるじゃないかと思って、子胥は馬から降りてお礼をし、“お邪魔いたします”と返事した。
 官舎に着いたら、県官は喧嘩する男を閉じ込めろと兵士に命じ、子胥を客間に誘って、お茶を入れた。
 二人は座って、県官は鬚を撫でながら、聞いた:“君はどこからいらっしゃったの?”

 子胥:“郢から参りました。商売で宋へ行く予定ですが。”
 県官は微笑んで、子胥の弓を見ながら小さい声で呟いた:“いい商売をしてるかな?楚を売るつもりだろう。”
 子胥思わず立ち上がって:“どういう意味でございますか?”

 県官は動かず、“その弓を見て、君は伍子胥さんじゃないの?可哀想に、お父兄様は賢人なのに、無惨な運命だった。私はこの件から見れば、楚はそろそろ崩壊するじゃないかと思うんだ。”
 子胥は不安しながら、“ご氏名を伺ってもよろしいでしょうか?”
 県官は:“僕は文種だと申しござる。三年前君のお父さん伍奢様は斉国へ太子の妃を迎えに行く途中、この村を通りかかった。僕はその時、まだ普通の庶民で、大志を抱いて、よく村人に誤解された。ところで伍奢様だけは僕の才能を見出して、楚王に報告し、県官の位に就かせた。いつもどう恩返しをすればと思っているけど、伍奢様は楚王に誅殺されてしまった。前日首都から指名手配の顔絵が来たので、君を見ればすぐ分かった。まさか今日は伍奢様の息子と出会って、悲しい上うれしいことだ。”
 子胥は涙が出て:“父上と兄は讒言で殺されて、これから私は他国の力を借りて、復讐しなければなりません。先生は凡人ではないですから、何か助言を頂けますでしょうか?”

 文種は言った:“太子建は大志に足りず、謀略も足りない、将来の立派な君王になるとは思わない。宋は戦争嫌いな国で、周辺の魯、斉、韓、晋などの人々は穏やかに生活し、愉快に働く、決して戦争を起こす国ではない。
 南の呉国は山紫水明、聡明且つ勇敢。今は飢えているように人材を求めていて、覇業を企んでいる。君が北上をやめて、呉へ行くべきだと思う。僕は友人の範蠡の相談を待ち、これから県官をやめて、南へ行くつもりだ。”

 二人は話がはずんで、酒を飲みながら深夜まで話し合った。
 翌日、子胥は文種に別れの挨拶をして、ついでに喧嘩の男を釈放すると文種に願いした。
 文種はいいと言って、その男を牢獄から出して、連れてきた。
 名前を聞いたら、男は:
 “僕は専諸だと申しござる。幼いから剣術を学び、天下一の技を身につけた。”
 なんで妻に恐れているかと聞いたら、専諸は:
 “何で笑うの?僕の顔を見て、そんな愚痴な人間ではないだろう。僕は一人に屈しているけど、万人上の才能を持っている。楚国は大きいけど、俺に尊敬される英雄は伍子胥一人しかいない。”
 文種と子胥二人思わず大笑いした。文種は子胥を指差して、“只今本人がいるぞ!”
 専諸は慌ててお礼をして、“まさかずっと憧れている人物は目の前に現れた!失礼なところはお許しください。”
 子胥もお礼を返し、“私は今犯人の身で、他国行き、力を借りて復讐しなければならない。専諸様のような勇士がこれから必要だと思いますので、どうか友になってください。”
 専諸は喜んで答えた:“必要ならいつでもいい、僕を呼んでください!”
 ここで、子胥は文種と専諸に別れ、宋国へ向かった。

 太子建はすでに宋国から脱出した。
 宋の大臣華氏と向氏は政権を奪うため、宋王の元公に反乱を起こした。もともと平和な国で今は血塗れている。
 亡命者の身で、この反乱の中で利用されるか誅殺されるかどっちかの運命だから、太子は息子の勝をつれて、数人の従者に守られて、隣国の鄭に逃げてきた。
 鄭国の人々は太子の経歴を知り、深く同情し、この上ない礼儀で好遇している。太子建は感激しながら居住し、間もなく子胥も宋から辿り着いて、二人は日夜相談し、将来を計画している。
 鄭は小さい国で、豊かな生活をしているが、兵力は不足し、後ろ楯にするには足りないと思って、建は鄭王に提案した:“鄭の周りは大国で、どの国から攻めてきても抵抗できないと思います。もっと積極的な外交手段を使い、周辺国と友好同盟を結び、外敵を防ぎ、国を守るべきだと思います。”
 鄭王は嬉しくて、よいと言った。
 太子は鄭の大使となり、先に覇王だった晋に出発した。
 晋王の頃公は昔から鄭を狙っていた。しかし出兵の理由もないし、太子の到来はまるで天贈りの好機会だと思う。
 宴会の後、晋頃公は太子と密談した:
 “太子は鄭と親しい関係を持ち、鄭に信用されている。そこで、晋軍は外から攻めて、太子は我が晋のために内応してくれれば、きっと鄭を乗っ取りできるだろう。鄭を滅ぼして、太子は鄭の国王になり、我が晋と手を組んでいれば、どんな事業でもできるだろう。”
 太子は驚いて、帰って子胥に相談した。
 子胥は:“これはいけないことです。鄭は我々を暖かく接してくれて、恩返しをすべき理屈なのに、反乱を謀らんでいたら神様も怒るだろうと思います。そして、晋は鄭を滅ぼしても、太子様を国王にするわけもないでしょう。はぜひ晋の話を聞き入れないようにしてください。”
 太子:“これは確かいけないことだが、でも成功すれば君は早く復讐も出来るし、私も早く帰国できるだろう。万が一を考えて、私の息子の勝を君に頼もう”
 このために、太子は欲心を起こして鄭に引き返した。しかし、まだ好機が到来してないうちに、たまたまあることで従者を殺そうとしたので、従者は鄭王に太子の陰謀を訴えた。驚いた鄭王は直ちに大臣らを集めて、太子建を誅殺してしまった。
 騒ぎの中、子胥は太子建の息子勝を背負って、剣で従者数人と重囲を突破して、鄭を出た。
 子胥は文種の話を思い出して、南の呉国へ行くと決意した。しかし、鄭から呉へ行く途中、楚国を通らなければならない。危険が満ちている旅で、子胥は従者らに言った:
 “私の顔が楚国に知られている。一緒に行くと、太子の勝様までに危険を招く。君らは忠実な方々で、勝様を守ってゆっくりと楚を通ってください。私一人で先に呉へ行って、頓着したら太子を迎えられるだろう。”