第二章 父子蒙冤成忠儀 英雄引箭退追兵
一方、費無忌が平王に言った:
“伍奢には二人の子があり、ともに賢明だそうです。今誅殺してしまいませんと、楚の憂いとなるでしょう。伍奢を人質にしてその息子二人を召喚してきて誅殺すべきです。そういたしませんと、楚の患いになると思います”。
楚平王は使者を出して伍奢に言った:
“お前の二人の子を呼び寄せれば、お前が生きていられるが、呼び寄せられなければ死ぬだろう”。
伍奢は:“私は二人の子がいます。長男の尚は愛深く人柄ですから、呼べば必ず参ります。次男の員は幼い時文を学び、成人になってから武術を身に着けました。員は剛気で他人の話には耳貸さず、恥辱を忍びうる性格で、大事を成し遂げることができます。かれはやってくれば父と併せて捕らえられることを見抜いて、どうしてもこないと思います。”と、使者に伝えた。
平王は聞き入れず、使者をやって二人の子を召喚させた。
伍尚は26才、伍員(子胥)は25才。二人は名門の子で、文才と武才を持っていて、楚の人々に敬愛されている。父親が囚えたことを聞いて、兄弟二人は日夜も心配している。
この日、突然平王からの使者が訪れてきて、長男の尚は出迎えて、話を伺った。
使者は:“おめでたいことがある。貴様の父親は忠実な大臣で、今はもう大王に釈放された。大王は大臣を囚えることに深く反省し恥ずかしく感じた。その為二人の子を呼んで、一つ、父親と面会し、もう一つはお二人様を朝廷の大臣になってほしいと大王の考えでござる。”
伍尚はお礼をして、使者にこう言った:
“父親は監獄に入れられて、私は弟と二人で毎日も悲しくて、味も知らずお腹一杯食べたこともなかったです。父親の釈放を待ち望んでいるだけで、大臣になるつもりがございません。”
使者は:“貴様のお父さんを釈放した。その償いとして大王は貴様兄弟を大臣にした。君らは私の話を聞いたらすぐついてきて、お父さんに会い、大王に謝恩すべきなのにまたなにかいいわけがあるのか?”
伍尚は部屋に戻り、子胥に使者の話を伝えた。子胥は:“ちょっとお待ちなさい。先ほど、僕は占いをしてみた。今日は甲子日、時辰は巳時だ。辰支神は日神の下で傷つけられ、天地の陰陽の気は塞がれている。これは国王が臣下を騙し、父親が息子を騙す意味である。使者についていくなら死ぬだけで、大臣になる話は嘘八百だ。”
伍尚は:“大臣になるつもりがない!父親に会いたくて、死んでもかまわん。”と言ったら、
子胥は:“行かないほうがいい。行かなければ父親の命は危険無だ。楚王は我々の勇武を恐れて父親を殺せないだろう。兄はもし行くなら、兄と父親は間違いなく誅殺されるだろう”。
伍尚は:“親子の愛と情けは心から生まれてくる。僕は死を覚悟したので父親に会いたい”。
子胥は思わず嘆きだした:“もし父親と一緒に殺害されたら、我が一家の仇に誰が報復してくれる?僕は他国に出奔して力を借りて、父の恥をすすぐにするつもりだ。父子もろともに死滅することは無意味だと思う。兄貴は行くなら、僕はここで別れることにする。”
尚は涙を流し、子胥の肩を抱いて:“僕も行かなかったら、天下の人々が我々兄弟を臆病者だと思うだろう。行っても父の命を全うさせることができないのを知っているんだ。しかし父が我々を呼び寄せて助かりたいと望んでおられるのに行きもせず、そうかといって、後日恥をすすぐこともできずに、ついに天下の物笑いとなるのが心残りなのだ”。
子胥は仕方がなく、兄貴の手を取って、“じゃ、行ってください、なにもないようお祈りする。僕もこの国を去るから、しかし必ず戻ってくる!”
伍尚は身に着けた剣を外し、子胥に渡した:“これは先祖の伍挙は楚の覇業を手伝って、庄王から頂いた宝物だ。百金の価値があり、鋭くて貴重な剣だ。君は謀略もあるし、武術にも精通し、父と兄を殺した仇を報復してくれる力もある。お前は逃げされ!私は死のうと思う。”と言って、使者の馬車に乗って、首都に向かった。
伍子胥は来なかったため、楚平王は伍尚を捕らえ、父の伍奢と一緒に処刑すると命じて、再び使者に軍隊をつれて子胥を捕まえようと命じた。
伍奢は子胥が逃げ去ったと聞くと、
“楚国の君臣はこれから兵難の苦しむ日々になるだろう!”と嘆きながら処刑を引受けた。
親子は首都の郢で公開処刑された。楚の人々は悲しくて、また秦女と費無忌を憎んで、面で二人の形を作って、油で揚げて食べる。(それは今まで伝わってきた油条という油揚げ)。
兄は使者と行ってから、子胥は太子建が宋にいるのを知っているので、弓を背負って、宋へ向かった。
旅して二日、後ろの道から馬を飛ばす音が聞こえてきた。振り向いてみたら、前の使者は千人の軍隊を連れて、子胥を捕まえに来た。
子胥は道の真ん中に立ち、弓を手にし、矢をつがえて使者に向かった:“お前らは俺の技を知ってるだろう!命を惜しいなら直ちに俺の目から消えろ!”
子胥の射術は楚国一で、使者も兵士もその名を知っている。
子胥は大声で叫んだ:“一歩進む奴を射殺してやる!お前らに俺の手段を見せてやる!軍旗を見ろ!”
矢を射って、矢は鋭い音で軍隊の中央にある軍旗の棒に射しあたった。
兵士らはその腕を見て、みんな怖くて後ろに避けた。近づいた使者は隠れ場もなく、慌てて馬から降りて、道路にうつ伏せにした。
子胥はまた一本の矢をつがえたら、みんな一斉に叫んで逃げ始めた。子胥再び怒鳴った:“平王に伝えておけ!楚国を守りたいなら俺の父と兄を釈放しろ!そうじゃなければ、楚を廃墟にするぞ!”
行方がばれたので、子胥は小道を選んで、出来るだけ人影を避けて宋に向かう。